最高裁判所大法廷 昭和23(れ)1095 判決
主 文
本件各上告を棄却する。
理 由
弁護人桑名邦雄の上告趣意第一点について。
原審公判調書によると、被告人Aは、同公判廷において、警察ではやばい品とは
云わなかつた、それは何かの間違いと思う、何しろ警察ではさんざん調べられたの
で今でも身体が悪い位であると供述した趣旨の記載のあることは所論のとおりであ
る。しかし唯このような供述だけで同被告人の所論警察における供述が拷問による
ものであると即断することはできない。若し被告人等が飽く迄も拷問による供述で
あることを主張するのであれば所論聴取書の作成者たる司法警察官の訊問を申請し
てその真偽を正す途もあつた筈である。然るに原審公判調書によると、何等そのよ
うな申請もなく、却つて検事から真相究明のため浅草警察署(赤羽警察署の誤りと
認める)捜査主任の訊問の申請があつた程である。この申請は却下されてはいるが、
ともかくも被告人Aの所論警察における供述が拷問によるものであるか否かについ
ては、被告人等において積極的にこれを争う意図の見るべきものもなく、他に拷問
を推認するに足る何等の資料もない。然らば被告人Aの所論警察における供述は拷
問によるものでないと推断するの外はないから、同被告人に対する所論聴取書中の
供述記載を適法な証拠として判示事実認定の資料に供した原判決を非難することは
当を得ない。論旨は理由がない。
同第二点について。
しかし原審公判調書によると、被告人Bは同公判廷において、判示衣類を被告人
Cと二人で買うことになつたと述べ、被告人Cも、結局被告人Bと共同で買つたわ
けであると述べている。これらの供述と原判決挙示の他の証拠を綜合すると被告人
両名が判示犯行を共謀した点は十分これを認定し得るから原判決には所論のような
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違法はない。
同第三点について。
しかし被告人Dに対する司法警察官訊問調書を仔細に検討するに、同調書中の所
論掲記の供述記載を料示の如く要約することは前後の関係からむしろ当然であつて
その間何等そご矛盾する点は窺われない。従つて原判決の証拠説明の不備を主張す
る論旨は理由がない。
同第四点について。
しかし原審公判調書中の、正木弁護人が被告人B及び「A」のため弁論した旨の
記載は、弁護人選任届及び同弁護人の弁論内容の記載に徴し、被告人B及び「C」
のための誤記であること明白であるから論旨は採るに足りない。
同第五点について。
しかし証拠調の限度を定めることは事実審裁判所の職務に属する事柄であるから
原審が所論の各証人訊問の申請を却下したからとてこれを違法と云うことはできな
い。
しかも所論聴取書の作成者たる司法警察官の訊問は唯検事が進んで申請したまでで
あつて別に被告人から請求したわけでないことは原審公判調書によつて明瞭である
から検事の申請を却下しながら同聴取書中の記載を証拠に採つたからとて刑訴応急
措置法第一二条に違反するものと云うことはできない。この点に関する論旨も理由
がない。(昭和二三年(れ)第八八号同年六月二三日大法廷判決参照)
弁護人亀井秀雄の上告趣意第一点について。
(一)しかし証拠調の限度を定めることは事実審裁判所の職務事項であるから原
審が所論の各証人訊問の申請を却下したからとて直ちに審理不尽の違法ありとは云
えない。
(二)原審公判調書中の、正木弁護人が被告人B及び「A」のため弁論した旨の
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記載は、被告人B及び「C」のための誤記であることは弁護人桑名邦雄の前記上告
趣意第四点において説示したとおりである。
(三)原審公判調書中の、申請証人Eの記載はFの誤記であり、同浅草署捜査主
任某とあるは赤羽署捜査主任某の誤りであるとしても、これがため原判決の違法を
招来するいわれもない。
(四)原判決の理由中においてBの一字を抹消しながら判事の認印等を欠ぐこと
は所論のとおりであるが、かゝる違法は判決に影響を及ぼさないこと明白であるか
ら上告理由として採用し得ない。
同第二点について。
しかし所論の各要点については既に前記第一点において説示したとおりであり、
又事実誤認の主張は上告適法の理由となし得ないから、論旨は総て採用できない。
よつて刑事訴訟法施行法第二条、旧刑事訴訟法第四四六条に従い主文のとおり判
決する。
この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。
検察官 柳川真文関与
昭和二四年四月二〇日
最高裁判所大法廷
裁判長裁判官 塚 崎 直 義
裁判官 長 谷 川 太 一 郎
裁判官 沢 田 竹 治 郎
裁判官 霜 山 精 一
裁判官 井 上 登
裁判官 栗 山 茂
裁判官 真 野 毅
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裁判官 小 谷 勝 重
裁判官 島 保
裁判官 斎 藤 悠 輔
裁判官 藤 田 八 輔
裁判官 河 村 又 介
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